喉に違和感…が痙攣性発声障害に発展するまで
私たちの声は喉の奥にある声帯が細かく震えることで発せられています。ところが、何らかの理由で声帯が強く閉じすぎてしまうのが「痙攣性発声障害」。声を出そうとしても詰まったり震えたりしてしまいます。喉に違和感…が痙攣性発声障害にまで発展するケースもあるのです。
喉に違和感が痙攣性発声障害となった
痙攣性発声障害のはっきりとした原因はわかっていませんが、接客業など声を出す職業の人に発症率が高いといわれています。しかも、病気そのものがあまり知られていないため、病院へ行っても原因不明とされることもあるのです。
発症してから病名がわかるまでにかかる時間は平均で3年。5人に1人は10年以上かかるといいます。そんな難しい声の病気に、一筋の光を当てた医師がいます。京都大学名誉教授の一色信彦先生です。一色先生が開発した画期的な手術法は「一色メソッド」と呼ばれるほどです。
そんな一色メソッドの手術を受けるのが、離婚を経験して2人の子どもを育てている46歳の看護師。喉に違和感…が痙攣性発声障害となって悩んでいました。すべての始まりは些細な喉の違和感からでした。
喉に違和感を感じたものの放置した
いまから3年前のこと、人としゃべるのが大好きで太陽のように明るい女性と患者さんに親しまれていました。そして、季節の変わりめに風邪をひいたときのこと、声がかすれてしまったのです。
かかりつけのクリニックを受診したその2日後には、すっかり元気になった女性。もちろん、かすれた声も治っていました。しかし、子どもたちを集めようと大きな声を出そうとしたそのとき、なぜか声が張り上げられません。普通の声がすんなり出るにもかかわらずです。
喉に違和感を感じたものの風邪が原因と考え、時間がたてば治るだろうと放置していました。そして、ほどなく風邪がぶり返します。すると今度は、まったく声が出ないのです。しかも、風邪が治っても喉の違和感は継続。なぜかわかりませんが数字がいいづらいのです。
そこで、声の病気を専門に扱う音声外来を受診。イコライザーなど専門の検査を受けました。しかし、声帯には異常は見つからず、発声の仕方が悪いという診断。トレーニングで声が出るようになるというのです。
喉に違和感を感じてから3年経過した
この女性の病気こそが「痙攣性発声障害」。そして、その治療で行う手術が一色メソッド。喉頭枠組み手術です。声帯には触らずに外側にある軟骨の形を変化させて声帯の開閉を楽にするというものです。声帯は軟骨とつながっているため、のどの軟骨を縦に切り開いて広げてやることで、強く閉じすぎていた声帯も自然と広がるのです。
これこそが一色メソッドのポイントの1つ。メスが直接声帯に触れることがないので失敗のリスクが少ないのです。そして最大のポイントは、局所麻酔を使って患者が意識のある状態で手術を行うこと。これで手術中でも声の出方を調節することができるのです。
これまで痙攣性発声障害の治療法はいくつかありましたが、一色メソッドは患者と会話をしながら声の出方を納得行くまで調節可能にした、世界初の手術法なのです。喉に違和感を感じてから3年経過したいま、この女性はさらにスムーズに話せるよう日々練習に励んでいます。
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