「ヒートショックプロテイン入浴」で筋肉痛を防ぐ
「ヒートショックプロテイン」をご存じですか? ヒートショックプロテインが増加すると、傷ついたタンパク質が修復。筋肉痛が治りやすくなるだけでなく、免疫力も増強されるのです。それを簡単に実現するのが「ヒートショックプロテイン入浴」です。その方法を紹介しましょう。
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ヒートショックプロテイン入浴の方法
ヒートショックプロテインは、体への熱の負荷によって細胞内に発現する特殊なタンパク質。もともとは体内に存在する物質です。そして、このヒートショックプロテインが増加すると、傷ついたタンパク質が修復されて「細胞を守る」「ストレスを防御」「免疫力を増強」といった、効果が現れます。
このヒートショックプロテインを増加させる方法が「熱の負荷」。すなわち、熱めのお風呂に入るだけで、筋肉痛や病気、怪我が治りやすくなるというわけ。その方法こそが「ヒートショックプロテイン入浴」です。
具体的には、湯温が40度の場合なら20分、41度なら15分、42度なら10分という入浴時間がヒートショックプロテインを増やすために必要です。感覚としては、汗がじわじわと出てきて、体温がほぼ38度になるのが目安です。
ヒートショックプロテインの注意点
入浴後に忘れてはならないのが保温です。入浴後は下着の上にバスローブやトレーナーなど保温性のよい服装を心がけてください。靴下も忘れずに履いて、しっかり保温しましょう。なお、冷たい飲み物は急激に体温を下げるので避けてください。
ただし、この入浴法は毎日続けてしまうと、体が熱刺激に慣れて負荷がかからなってしまいます。すると、ヒートショックプロテインが増加しづらくなるのです。
また、ヒートショックプロテインの量が最大になるのは、この入浴を行った2日後になります。ここをピークに1~3日ぐらい効果が持続するのです。このため、週に2回ほどヒートショックプロテイン入浴を行うのが有効といえるでしょう。
筋肉痛を防ぐという意味でもヒートショックプロテイン入浴は有効です。激しい運動などをする2日前にこの入浴を行っておけば、筋肉痛になりにくくなります。お風呂の温度で体調をコントロールできるのです。
ヒートショックプロテイン入浴の効果
ヒートショックプロテインが最大化するのは2日後ですが、傷ついた筋肉が修復する効果は入浴後からも発揮されます。このため、筋トレの効果を上げるためにヒートショックプロテイン入浴を活用ことも可能。すなわちヒートショックプロテイン入浴の前に筋トレをすると、筋肉を効率よくつけることができます。
さらにヒートショックプロテイン入浴は、寝る前の10~30分が理想的です。筋肉は就寝中に修復されるので、その前にヒートショックプロテインを増加させておきます。
また、日中に激しい運動をした夜でも、ヒートショックプロテイン入浴は効果を発揮します。「筋肉疲労には熱いお風呂がよい」という話を聞いたことがあるでしょう。じつはヒートショックプロテインにその効果の秘密があったのです。
ヒートショックプロテインと運動能力
じつは、ヒートショックプロテインは細胞の健康保持機能を上げるだけでなく、スポーツ能力の向上にも関係しています。ヒートショックプロテインを増加させることで、筋肉疲労が軽減するだけでなく、パフォーマンスを向上させる効果も出るのです。
ある研究では、クロスカントリー選手10人を加温グループと非加温グループに分けた走行テストを実施。それぞれのグループの運動能力を比較したのです。
すると、加温によってヒートショックプロテインが増えたグループでは全員の走行時間がが増加し、5人中2人が加温前よりランクアップしました。非加温グループに比べて運動能力の向上が見られたのです。
ヒートショックプロテインと血糖値
ヒートショックプロテイン入浴の効果は、筋肉痛を弱めたり運動能力を高めるだけではありません。血糖値を下げて糖尿病を予防する効果もあるのです。
糖尿病はインスリンの分泌が不足したり、インスリンの効きが悪くなって、血液中のブドウ糖が筋肉や肝臓にうまく取り込めなくなる病気。血糖値が上がったままになって血管が劣化してしまいます。
そして、ヒートショックプロテインには、筋肉や肝臓へのブドウ糖の取り込みを妨げる物質の活性化を、抑えてくれる作用があるのです。こうして血糖値を下げてくれるので、糖尿病を予防してくれます。
ヒートショックプロテイン効果の実験
ヒートショックプロテインの効果がおきるのは人間だけではありません。その効果がわかる実験を紹介しましょう。たとえば熟していないトマトを用意して、42度のお湯に入れてから保温器で24時間保温します。
その後、常温で1週間置いてみると、加温したトマトは熟すのが遅くなるのです。これは熱を加えたことでトマト内のヒートショックプロテインが増加。酸化というタンパク質の変性要因を防いだからです。
水で薄めた卵白を2本の試験管に入れて、片方にヒートショックプロテインを注入します。そして、両方を同時にお湯の中に入れると、何も入れていない卵白は数分後に白く固まり始めました。しかし、ヒートショックプロテインを入れた卵白は透明なままなのです。
悪い意味で使われるヒートショック
なお「ヒートショック」という言葉は、入浴に関して2つの意味で使われています。熱いお風呂でヒートショックプロテインを増やすヒートショックと、寒い冬に温度差のあるお風呂で突然死をおこすヒートショックです。
悪い意味で使われるヒートショックとは、冬場の入浴に潜む血圧の急激な変化でおこるもの。暖かい部屋から寒い脱衣所、そして熱いお風呂という、急激な温度変化が短時間のうちに発生することで、血圧の急激な上昇や下降が引き起こされます。
ヒートショックは、冬の入浴中におこる突然死の大きな要因。血圧が急上昇すれば脳出血や脳梗塞、心筋梗塞、血圧が急低下すれば脳貧血でめまいをおこしす危険があります。悪いヒートショックの対策には、部屋と脱衣所と浴室の温度差を小さくすることが肝心。お風呂のお湯もぬるめで徐々に体を温めます。
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