呼吸の回数を減らすトレーニングでストレス軽減
ふだんの呼吸回数を抑えることでストレスを減らすという取り組みが、海外ではすでに広く行われています。アメリカでは延べ2千万もの人が、呼吸回数を減らすためのトレーニングを受けているといわれているほどです。呼吸の回数を減らすトレーニングでストレスが軽減した症例を見ていきましょう。
呼吸回数を減らすトレーニングを指導
呼吸回数を減らすトレーニングが広く行われるようになったのは、17年前におこった9.11の同時多発テロ。このショッキングな出来事に全米の人々のあいだには大きな不安と恐怖が蔓延しました。
ニューヨークに住む女性もその1人。その日は貿易センタービル北棟の82階のオフィスにいたといいます。隣にいた同僚は小さい子どもが2人もいたのに助かりませんでした。ショックで一時は自ら命を絶つことも考えたほどです。
深い心の傷を負った人たちに、呼吸回数を減らすトレーニングを指導したのが地元コロンビア大学のリチャード・ブラウン博士のチーム。博士曰く「多くの人が精神的にとてもひどい状態でした。精神安定剤も効果がないほど」といいます。
「自分も医師として何かしなくてはと思った」という博士は、呼吸回数を抑えるトレーニングを週2回、90分間行わせました。すると、不安で眠れないほど深刻なストレスを抱えた人たちに次々と変化が現れたのです。
呼吸回数を減らすことで体質が改善
トレーニングを6週間続けただけで、ストレスが平均30%も減りました。先の女性も「もう泣くことはなくなった。現実を受け入れるようになった」と話します。
現在、博士は呼吸回数を減らすトレーニングが体質の改善にも役立つのではと注目しています。ターゲットの1つが体のなか、腸でおこる炎症です。腸に炎症を持つ人たちに呼吸回数を減らすトレーニングを行ったところ、半年間で体内から炎症の強さを示すタンパク質が15%も減少したのです。
博士は「腸内の炎症は薬で治療するのが非常に困難です。しかし、呼吸をゆっくりにしたおかげで症状が大幅に改善しました。深き気をするだけで体中すべてが強くしなやかに変わっていくのです」と話します。