呼吸の回数でストレスが軽減するメカニズムとは
深呼吸には血圧を下げる効果があることが分かっています。とはいえ、ふだんからこまめに深呼吸をするのは至難の業。そこで、呼吸の回数を減らすトレーニングが行われています。なぜ呼吸の回数を減らすとストレスが軽減するのか、そのメカニズムを詳しく見ていきましょう。
深呼吸でなく呼吸回数コントロール
深呼吸すること自体、体によいことはわかっています。呼吸と血圧との関係を調べた有名な論文では、全国の研究機関が協力。なんと2万5千人以上を対象に、大規模な調査が行われました。
血圧を測定する際に、1分に12回のペースで深呼吸をしてもらったところ、そうでないときと比べてほぼ確実に血圧が低下するという結果が出たのです。なんと血圧が平均で8.13も下がりました。
とはいえ、深呼吸がいくら体によいからといって、ふだんからこまめに実践するのはほぼ不可能。そこで、深呼吸を時々意識してやらなくても、常に深呼吸しているような体になる方法が呼吸回数のコントロールです。
ポイントは脳。1つは呼吸を司る呼吸中枢、もう1つは呼吸に関していままであまり注目されてこなかった扁桃体です。偏桃体はストレスを検知する部位になります。
呼吸の回数は唯一コントロール可能
ここで呼吸が偏桃体によってどのように変わるかを見てみましょう。呼吸回数を減らしたときに、脳の偏桃体にどのような変化がおきるかをMRIで実験。すると、普通の男性と比べて偏桃体の部分にストレスがかかっていないことがわかります。
偏桃体はストレスを検知する場所。その結果、不安や恐怖や怒りといった感情を生み出します。それは人間が危険な状態に置かれているときは、逃げたりケガに備えたりなどしなければならないからです。
ストレスを検知すると偏桃体は緊急モードにスイッチを変換。すると、呼吸の回数が上がったり、心拍数が上がったり、血圧が上がったり、交感神経が興奮したりと、私たちの体にさまざまな変化がおこります。いわば本能的な行為といえるでしょう。
ここで、これらの体の変化のなかで、唯一自分でコントロールできるのが呼吸の回数です。偏桃体が緊急モードに入っているときに、呼吸中枢が呼吸を抑えてあげることで、安心モードに切り替えさせることができます。その結果、心拍数や血圧、自律神経などのさまざまな変化が収まるのです。