難聴の原因は滲出性(しんしゅつせい)中耳炎
仕事中に話を聞きもらす、駅のアナウンスを聞きもらす…そんな難聴の原因は滲出性(しんしゅつせい)中耳炎かもしれません。滲出性中耳炎による難聴の特徴は「雑音があるとき」だけ発症すること。滲出性中耳炎がどうしてこの難聴の原因になるのかを詳しく見ていきましょう。
難聴になるのは雑音があるときだけ
都内に住む58歳の女性に難聴が出たのは10年前。その当時、女性は印刷会社で経理の仕事をしていました。頼まれたのはいつもの慣れた収支報告書の作成。月末までに済ませればよいと思っていました。ところが次の週明け、仕事を催促されたのです。どうやら「今週中」という言葉を聞きもらしていました。
このときはぼんやりしていたせいだと自分で納得。とくに異変だとは思っていませんでした。しかし、そのうちに聞きもらしが頻繁におきるように…。自転車のベルにまったく気づかず、自転車同士で接触したこともありました。
この女性、なぜ耳の異常に気づかなかったのでしょうか? 午前中は聞き取れたけれども午後は聞き取れなかったり、ついさっきは聞こえなかったのにいまはよく聞こえたり…。じつは、この女性が難聴になるのは「雑音があるとき」だけでした。ほとんどの音は聞こえるので、異変に気づけなかったのです。
難聴が原因で家族関係が悪化した
難聴が原因で家族関係が悪化してしまった女性もいます。84歳の女性に聞きもらしが目立ち始めたのは3年前。その日の夜、家族で焼肉を食べに行くことになっていました。
ところがその日の夜、時間になってもこの女性は準備をしていません。家族が外出しようとすると「えっ今日なの?」と反論します。「今夜」ということを聞きもらしていました。
そして、聞きもらしはどんどんエスカレート。家族も年齢が年齢なので、ボケや認知症なのかと思い込むようになりました。こうして家族との会話が少なくなり、女性は引きこもりがちになっていったのです。この女性も「雑音があるとき」だけ難聴になっていたのです。
難聴の原因は滲出性中耳炎だった
この難聴の原因こそが滲出性中耳炎。子どもがよくなる中耳炎は、鼻からウイルスや細菌が入って炎症をおこすものです。一方の滲出性中耳炎は50歳以上から急増する病気。痛みがないためなかなか気づきません。
ちなみに、滲出性中耳炎は子どもにも多い病気。これは耳管がまだ発達していないためにおこります。そして、50歳を過ぎて老化が進むと耳管が機能しなくなってきて、高齢者に発症するようになるのです。
また、高齢者に発症することが多いため、加齢によって耳が遠くなると勘違いする人が多いのも事実。本当は治る難聴の原因に気づかない人が多く、場合によっては補聴器を付けている人もいるほどです。滲出性中耳炎の治療をしたら補聴器も不要になったという人もいるといいます。
「頭を傾けたとき聞きにくくなる」「耳が詰まる感覚」「耳ツーンがとれにくい」などの症状があったら滲出性中耳炎による難聴の可能性があります。50歳以上で難聴気味と思ったら、耳鼻咽喉科で正確に診断してもらいましょう。
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